5月 102013
 

2012年の原稿です。

現代朗読協会のイベント『キッズ・イン・ザ・ダーク』に行ってきた。「見てきた」のか「聞いてきた」のか難しい。あえて書くなら「感じてきた」ということだろう。黒衣の女性達(数名の男性もいた)が、朗読をするのだが、書かれている内容とは違う表現をしていく。もちろん、書かれた言葉、読んでいる言葉に左右されながらも、そのときある自分の存在を表現していくのだ。

その様は朗読をしながらのダンスのようであり、演劇のようであり、だけど朗読という不思議な状況が展開される。それでいて面白い。

たとえば、舞台の真ん中に背もたれのないひとつの椅子が置かれる。そこに朗読しながらひとりのひとが座る。しばらくすると、別のテキストを読みながら、別のひとが現れ、座っているひとを腰で押し出すように椅子の取り合いをする。これが何度か続くのだが、そこで気がつくことがある。椅子から押され演技のようにその場を退くひとと、あくまで座っていることに固執して頑張るひとでは声の質が変わる。はじめのうち、パターンのように何度か押されると退いていくひとは力を抜いて退いていくことが声でわかる。しばらくして座ったひとが、そこに座っていることに固執しだして居続けようとすると、そのような声になる。声に本人の「押し合うときの力み」が表現されてしまうのだ。だから、朗読している内容は聞こえなくなり、その状況で力んでいるその力み具合が伝わってくるようになる。

 

声はとても繊細である。普段はあまり意識しないが、いろんな情報が詰まっている。ヒーリング・ライティングをしたあとで、その文章を朗読してもらうときにそれがよくわかる。

本人はスラスラと文章を書くが、そこにはいろんな感情が隠されている。喜びは比較的書きやすい。しかし、悲しみや苦痛は書きにくいものだ。書く文章のなかに悲しみや苦痛を表現しなければならなくなるとき、多くの人はそれを言葉の裏に隠してしまう。簡単な言葉でやり過ごすのだ。しかし、朗読していくとそれは声に現れる。書いた文章を朗読してもらい、何かの感情が声に現れると、その部分を丁寧に書き直してもらうことがある。すると、そこからその人の隠した感情が吹き出すことがある。それがひとしきりすむとすっきりするのだ。それまで隠していた感情が解放されるので。

キッズ・イン・ザ・ダークでは朗読している内容とは別に、笑ったり、怒ったり、叫んだり、呻いたりすることで朗読者は感情を解放していく。それを見ている観客は、素直な感情の解放に立ち合い、自分の内側に眠っている感覚に対峙することになる。

素晴らしい現代芸術でした。

現代朗読協会

4月 192013
 

2011年の原稿です。

これから時々、Tokyo Workshopに告知されるワークショップに参加して、その状況をリポートすることにしました。まず第一弾は「三木きよ子泥だんご教室」。

なんだそれ! と思いませんか。はじめてその告知がでた2009年、僕は絶句してしまいました。「泥だんごの作り方を習うって、どういうこと?」と。そのときは「変なこと教える人がいるんだな」程度の認識でしたが、それから月日が経ち、再び同じ告知がなされたのです。ところが、前回の告知と大きく違う点がありました。それは、写真が掲載されていたのです。こちらのページ。

見ましたか? びっくりでしょう? あれが泥だんごだなんて、誰が思いますか? もう俄然興味がムラムラしてしまったので、その教室に行くことにしました。

会場となったのは千石空房。こちらもただならぬ雰囲気。

会場に着くと三木きよ子先生が、いろいろと教えてくださいました。もともとこれは左官屋さんの技法なのだそうです。それをワークショップで教えてくれるということ。日本にはいろんな色の土があり、下の写真は、すべて自然の土の色なんだそうです。青があり、緑があり、黄色があり、赤がある。これだけそろえばどんな色でも作れそうですね。

 

三木先生は土絵を専門としているそうですが、榎本新吉という左官屋さんから教わってやっているのだそうです。三木先生が取材されている「左官教室」という雑誌を見せてもらいました。三木先生の師匠である榎本新吉さんというかたがすごいかたで、ググるといろいろとわかります。

教室がはじまるとテーブルには、選んだ色の「のろ」と、白い泥だんごが用意されます。三木先生が手順とコツを教えてくれます。

 

この泥だんごは先生があらかじめ作ってくださいました。小さな玉をまず作り、乾かしては少し大きくしという作業を繰り返して作るそうです。一度に大きい泥だんごを作ると、中の水分が抜けずにあとで壊れてしまうのだとか。だから泥だんご教室をおこなう前は、先生の庭はこの白い泥だんごをたくさん干しているので郵便配達員なんかが庭を覗いて怪訝に思うそうです。

郵便局員 「それはなんですか?」

三木先生 「泥だんごです」

郵便局員 「・・・」

泥だんごから作るロングバージョンな泥だんご教室もあるそうです。僕が参加したのは「磨きコース」、泥だんごから作るのは「極めコース」というのだそうです。

教わった通りに「のろ」を泥だんごに塗ります。隣に座ったかたの塗る様子。

全体に塗っていくので手が「のろ」だらけになり、ぬるぬるします。その状態は写真に撮れません。なにしろ自分の手が「のろ」だらけですから。

全体に塗ったらドライヤーで乾かします。本当は自然乾燥がいいそうですけど、それを待っていると教室の時間が長くなってしまいますから。。。

このあとまた「のろ」を塗り、それを乾かしと、三回繰り返しました。このあとオリーブオイルを塗り、磨いてから次は白い粉を付けて磨きます。そのときの方法やコツは、直接教室で習ってください。

完成した僕の泥だんごはこれ。ジャン!

石を磨いたようにしか見えません。これが泥でできているなんて、、、完成したのは僕が一番早かった。

そのとき、教室にひとりの老人が来ました。酸素吸入の管を鼻につけていました。

「これ作って来たよ」

編み込んで作った小さな鍋敷きのようなものを取り出します。三木先生がみんなに紹介しました。

「このかたが榎本新吉先生です」

「ひとつしか作らなかったけど、誰かにやるよ」

完成した泥だんごを僕が持ってニコニコしていたので、それを見て「あげる」と言って榎本先生から泥だんごを置くための小さな鍋敷きをもらいました。えーっ、なんというラッキー。先生は最近ではあまり体調がよくないそうで、滅多にこの教室を覗きには来なかったと言います。その鍋敷きと一緒に泥だんごを撮りました。

最後にみなさんの作品を集めて記念撮影です。

ハイ、チーズ。

真ん中の穴のあいたものは試験管のような細いガラスのチューブをさして一輪挿しになります。希望すれば作ることができます。

とっても楽しいワークショップでした。

千石空房ホームページ

川窪万年筆店(千石空房を運営している)